- JR西日本近畿地区駅構内で運営する約500の店舗・設備データが個々のPCやサーバーに散在
- JR西日本の厳格なセキュリティレベルをクリアする運用環境をSMSデータテックが構築
- プリザンターで店舗・設備データの管理を一元化し、あらゆる場所からアクセスして情報閲覧が可能に
課題:店舗、設備のデータが社内に散在し、業務が円滑に回らない状態に
データの探索に時間を要し、台帳が更新されていないケースも散見
(株)ジェイアール西日本デイリーサービスネット(以下、DSN)は、JR西日本の近畿地区で約500店舗のコンビニエンスストアや商業施設、25施設のホテルを運営するサービス会社です。グループ会社である(株)ジェイアールサービスネット金沢・岡山・広島・福岡を統括しています。
そうした中、以前からDSNやグループ会社の店舗開発、設備管理の課題を洗い出しており、その過程で問題点として浮上したのが、店舗や設備の情報が、紙ベースやExcel、Wordなど様々な形式で、それぞれのPCやサーバーに管理しているという実態でした。カンパニーアセットソリューション室 室長(工務業務)を務める小畠伸一氏は次のように話します。「多店舗化が加速する中で、紙やExcelといった古い管理方法では、もはや業務が円滑に回らない状態に陥っていました。例えば、我々が管理する商業施設ではテナントの入れ替わりがあります。その際、店舗にどのような設備が整備されているのか、その設備はいつ更新されたのかなどを把握し、必要に応じて交換や刷新をする必要があります。しかし、そのデータを誰が持っているのか、誰が引き継いでいるのかが分からず、調べるのに時間を要するケースが多発していたのです」
苦労して探し当てた設備管理台帳にも情報が更新されていないなど、時折不備が見られたようです。設備を点検や修繕、老朽取り換えした場合、その情報を記載する台帳のありかが分からず、更新されないケースがあったことが原因です。「老朽取り換えが記載されなければ、どの設備をどの周期で交換する必要があるのかの判断が困難になります。改善の必要性は認識していたのですが、日常の業務を優先して後回しになり、問題を抱えたまま日々が過ぎていきました」と、小畠氏は言います。
システムの選定:難航する状況を打破した展示会でのSMSデータテックとの出会い
プリザンターの良さに加え、真摯な対応に好感を抱き開発を依頼
そうした中、局面が変わる出来事が起こります。JR西日本資本のグループ会社として、設備管理を確実に行うローカルルールに則し、店舗に関する設備管理台帳を作成し適切に管理するという決定が通知されたのです。同社では、どのように管理すれば効率的であるのかを議論を重ね、クラウド管理のデータベースシステムの採用をすることとしました。
しかし、検討は難航します。当時、探索を担当したカンパニーアセットソリューション室企画主事の北山尚代氏はこう振り返ります。「様々なサービスを調べ検討しました。ですが、1アカウントごとに課金されて高コストになってしまったり、JR西日本が規定する高度なセキュリティ要件をクリアする技術力がなかったり。あるいはUI(ユーザーインターフェース)が使いにくそうなど、どのサービスを利用したら良いのか分からなくなり、話が進まない状況が続きました」
そんな状況を打破したのが、ITの大規模な展示会でブースを構えていたインプリムの認定パートナーであるSMSデータテック(以下、SDT)との出会いでした。北山氏が、SDTの担当者に整備したいデータベースの条件を話すと、「それであれば、Webデータベース『プリザンター』を使って我々が構築できます。任せてください」と、力強い言葉が返ってきたのです。「当社はITに詳しい人材が少なく、いくらノーコード、ローコードといえども、自分たちの手で構築するのはハードルが高いと感じていました。SDTに提案を受け、依頼すれば、容易かつ早期に開発ができると思ったというのが正直な気持ちです」と、北山氏とともに探索を担当した企画主事の藤井洋介氏は話します。「試しにExcelで管理していた台帳を渡し、プリザンターを使ってデータベースを構築してもらったところ、非常に使いやすく、UIも親しみやすい印象を受けたことを今でも覚えています。」(藤井氏)
システムの導入:JR西日本グループが規定した高いセキュリティレベルをクリア
画面カスタマイズやアドオン開発など柔軟な拡張性で要望を実現
プリザンターを活用したWebデータベースの構築プロジェクトが始まり、その過程の中でも、SDTはDSN側と何度も打ち合わせの機会を設け、細かくニーズを拾いながら、着々とシステムを組み上げていきました。その中で、最も難関となり工数がかかった問題が、JR西日本グループの高いセキュリティレベルに対応した環境を整備することです。「駅の図面など各種情報が万が一外部流出すると悪用されるリスクがあります。漏洩防止のためには厳重な対策が求められます。情報システムの主幹部門より提示された、セキュリティ対策のチェック項目があり、それを全て満たさないとJR西日本グループとして社内と外部のネットワークを接続できない決まりがあるため、その壁を乗り越えるのが最大の難関でした」(平井氏)。その要件に対し、SDTは一つひとつの項目に対応し、高い技術力で全てのチェックリストをクリアする環境の構築に成功したのです。
一方で、業務フローを考慮した画面構成のカスタマイズにも数多く対処。その他、プリザンターに入力された各店舗の設備諸元をボタン一つでExcel上に表示する機能もアドオン開発しています。「この設備諸元を印刷した資料は、テナントを店舗に誘致する『テナントリーシング』の際に活用できます」と、北山氏は説明します。こうして、DSNのニーズに合わせて様々なカスタマイズを施し、プリザンターを活用したWebデータベースは構築され、稼働を開始したのです。
稼働後、最初に行ったのが、運営する約500店舗の建築・電気・通信・機械・給排水・防災・ガスの各設備のデータと図面、工事費、議事録、行政への届け出書類などを個々のPCやサーバーのファイルからプリザンターに移行する作業です。「稼働から約半年で6割移行し、あと3か月で終了する予定。この作業が終われば、店舗管理、設備管理に関する全てのデータが保管された状態となり、プリザンターにアクセスすれば誰でも必要なデータが入手できる環境が整います」と、企画担当リーダーの柿本貴司氏は話します。
今後の展望:グループ会社の点検監査も出張せずに遠隔で確認でき、負荷が軽減
セキュリティ要件を満たし、汎用性の高いプリザンターに更なる期待
プリザンターには、DSNだけでなくグループ会社も自社店舗や設備の情報に関するデータ移行作業を行っています。移行が完了し、グループ会社の店舗や設備関連のデータが全てプリザンター上で確認できるようになれば、統括するDSNの業務の効率化にもつながります。「各社各店舗の設備点検が着実に行われているかをDSNとして監査するため、従来は出張して紙の資料を見て、確認していました。今後はプリザンターに点検結果報告書をアップロードしておいてもらえれば、出張せずに遠隔で確認できるようになり、業務負荷が格段に減ります」(北山氏)。この点検結果報告書を保管するテーブルは、稼働後にDSNの担当者自らが新たに作成したもの。「パソコンに詳しいわけでもない自分たちでも簡単にカスタマイズできる点もプリザンターの優れたところ」と北山氏は言います。
また、グループ各社の店舗など現場に行って課題解決する際も、プリザンターを見れば、各種データがその場で確認できます。情報を入手するだけでなく、現場の状況をリアルタイムで書き加えて発信することも可能です。こうして出張がより効率的で有効なものに昇華できるようになった点もプリザンターの導入効果といえます。
最後に、小畠氏は今後の展望についても言及します。
「プリザンターの持つ汎用性の高さと、ITリテラシーが高いとは言えない我々でも業務アプリが作れる操作性の高さを実感しています。本来、新たな業務システムを導入するにはセキュリティ要件などを満たしているか確認する必要があるので、導入には大変な労力を要しますが、すでに導入済みのプリザンターを基盤とすれば、他の業務の効率化にも役立つのではないかと期待しています。」
DSNでは、今後もプリザンターを徹底的に活用し、さらなるITレベルの底上げを図っていきたいと考えています。
同社が運営する商業施設「エキマルシェ宝塚」