情報企画室 田場 盛隆 様
- Excel利用による病院事務の非効率性や、準備の時間・コストが増大する院内会議の紙資料を問題視
- iPhone/iPadからのプリザンター活用により、業務の効率化や高速化、ペーパーレス化を実現
- 他病院との勉強会を自主運営し、情報交換や導入支援を通じてユーザー同士が共助する環境も構築
課題:Excelによる転院相談案件の共有・報告が業務のボトルネックに
会議のたびに準備や廃棄が必要な大量の紙資料にも頭を悩ます日々
大阪府北部のベッドタウンの枚方市で195床のケアミックス型病院として運営されているのが東香里(ひがしこうり)病院です。精神科と透析センターを備える点が特徴で、関西圏全域から患者を受け入れています。精神疾患を抱えて透析が必要というケースに対応できることから、他の病院から転院相談を受けることも多い状況です。複数の相談員が同時並行で相談に対応することもあります。
しかし、その業務で課題だったのが、相談員が案件内容の共有・報告のためにExcelを使用することによる効率の低下でした。当時の実態を同病院情報企画室主任の田場盛隆氏はこう話します。「まず、パソコン上でExcelファイルの保管場所を探す手間があり、見つかるまで業務が止まります。さらに複数で同じファイルに同時に書き込めないので、他の相談員が入力中は、そこでも業務が停止してしまいます。こうした『Excel待ち』が頻繁に発生しており、業務上のボトルネックでした」
一方、病院全体では会議で配布する大量の紙の資料も問題となっていました。例えば、院長や精神科、整形外科などの各科の責任者各部署の責任者が約40人出席する週1回の朝会業務連絡会議では、1人につき20枚ほどの資料が毎回配られます。それだけで紙の量は約800枚に上ります。他にも経営や感染対策、医療事故防止の委員会も月1~3回実施され、その都度、10~20枚の資料を20~40人に配布します。「患者の個人情報が書かれていることも多く、会議後はシュレッダーで廃棄する手間も生じます。準備や廃棄の時間に加え、印刷代、紙代のコストもかかります。私たちは、シュレッダーから排出された紙屑の山を前に、どうにか問題解決できないかと頭を悩ます日々を送っていたのです」
システムの選定:クラウド不可の病院でオンプレミス運用できるプリザンターに着目
公式サイトの設定や使用方法の解説が丁寧で、導入の容易さに好感
同院では、脱Excel、ペーパーレス化に向けてWebデータベースの導入を模索し始めます。ただし、病院は電子カルテなど患者の個人情報を取り扱っている関係で、データを外部に保管するクラウドサービスを活用しづらいという制約があります。そのため、内部でサーバーを設置し、オンプレミスの環境で運用できるシステムを探索。しかし、あるソフトはサーバーの構築が困難で採用を断念するなど導入にはいくつものハードルがありました。
そうした中、田場氏の目に留まったツールがプリザンターです。無料で始められるオープンソースソフトウェア(OSS)で、院内のサーバーで運用が可能。サーバーを立てる端末も高スペックが要求されず、従来使用していた古いパソコンを活用できる点もメリットでした。さらに、田場氏の関心を誘ったのが、設定や使用方法が公式サイトで整理され、丁寧に解説されていたことです。
「一般的にOSSはそうした解説が不十分で、内容を理解できるユーザーが自己責任で使うツールが大半ですが、プリザンターは逆に説明が非常に丁寧でした。このツールであれば、さほどプログラムに詳しくない自分でも業務アプリを作って、動かし、院内に定着させられるのではないかと、可能性を見いだすことができたのです」(田場氏)
実際、懸案だった転院相談の記録をプリザンターに移行したところ、相談員は「Excel待ち」が無くなり、遅滞なく入力できるようになったため、業務スピードが向上。また、従来は記録を見るためにパソコンが設置された事務所に戻る必要があった点も改善。プリザンターはWebデータベースのため、相談員が手持ちのiPhoneからアクセスして、記録内容をいつでも確認できることが大きな利点となっています。「相談員は診察室にいる医師に呼ばれ、『あの転院案件はどうなっているか』と聞かれた際も、今は事務所に戻ることなく、その場で確認できます。業務の手間が大きく減り、相談員にとってプリザンターは今や不可欠なツールとして定着しています」(田場氏)
システムの導入:会議のペーパーレス化は事前にメリットを周知して定着を円滑に
入院判定や院内研修・手技の動画共有などプリザンター実装が加速
もう一つの課題のペーパーレス化も、プリザンターの導入が突破口となっています。事の発端は、院長からの「院外の外部委員会ではiPadを導入しペーパーレス化を図っている。同様にできないか」という依頼でした。田場氏はプリザンターを軸に紙資料の削減を構想。構築したのが、会議前に各科の責任者からPDF資料PDFで集約し、結合版をアドミニストレーター(管理者)である田場氏がプリザンター上にアップロードして共有する業務アプリです。加えて、40台のiPadをレンタル契約リユース製品でコストを圧縮して導入。会議では出席者にiPadを配布して閲覧を促すことでペーパーレス化を実現したのです。
ただし、ユーザーによっては紙資料が無くなることに抵抗感を抱くことも予想されるため、田場氏は普及のための工夫も施しています。それは、院内でiPad/PDF化のメリットを周知することです。iPadの利点は、指で画面上をピンチアウトすることで文字を拡大できる点です。院長や理事長、施設長にその有効性を説くと「資料が見やすい」と絶賛され、まずは上層部の心を掴みます。その上で、文字拡大の他に「今までは印刷コストがかさむため不可だったカラー化がPDFであれば可能」「データなので物理的な保管場所が不要」など数々の利点を院内でアピールします。そうして、関係者の合意形成に力を注いだのです。「その結果、大半が賛意を示し、円滑に定着を図れました。今では院内のほとんどの委員会でプリザンターによるペーパーレス化が実現しています」と、田場氏は話します。
その後は、効率化のため、あらゆる業務へのプリザンターの導入を加速させます。患者を受け入れるか否かの入院判定業務もその一つです。他のクリニックや病院から患者の紹介状を受け取る場合は、いまだにファックスが使われています。その際、相談員は受信次第、判断を仰ぐために紹介状を持って院内で担当医師を探して回ります。「複数の医師の判断が必要なケースもあり、判定までに半日以上かかることも珍しくなかった」と、田場氏は振り返ります。
今は、そのフローをプリザンターによって業務アプリにすることにより、判定は圧倒的にスピード化されています。ファックスを受信次第、相談員がプリザンター上に登録すると担当医師に一斉に通知が飛びます。医師は時間がある時に確認して判定し、入力するだけです。入院判定業務は数時間で済み、大幅に短縮しています。
さらに、動画共有にもプリザンターを活用し、看護師がiPhoneで視聴できるシステムを構築しています。各自が好きな時に院内研修動画が視聴可能な他、看護師の上級職が注射方法や医療機器の使い方などの手技をiPhoneで自ら撮影し、プリザンター上にアップロードして共有する施策も実践。ナレッジの横展開にも役立てています。
今後の展望:業務アプリ開発の相談が続々、院内に広がるプリザンター活用の輪
同じ環境を再現する「サイトパッケージ」で他病院の導入支援も
プリザンターによる業務改善効果が院内で認知され、今では、田場氏のもとに業務アプリ構築の相談が来る機会も増えています。例えば、栄養士が発案した、糖尿病や高血圧の患者が摂取する食事を記録する業務アプリ。看護師の記録に対し、栄養士が指導のコメントを返して食事を管理しています。また、患者に点滴を投与する際の滴下速度を自動計算するアプリもプリザンターで実装。看護師が手元のiPhoneで利用するなど、活用の輪が広がっています。
田場氏はプリザンターの活用事例の対外的な発表も積極的に行い、それを耳にした他の病院からの見学希望がひっきりなしに舞い込んでいます。「どの病院も人材不足をカバーするDX化を模索しています。何が正解かを探し求めており、私たちの取り組みが少しでも参考になればと考え、見学は可能な限り受けている状況です」(田場氏)
そして、田場氏は他の病院のシステム担当者とプリザンターの勉強会も自主的に行い、情報交換や実践方法の議論を活発化しています。プリザンターには構築した業務アプリをエクスポートし、それをメールで受け取った他のユーザーがインポートすることによって、同じ環境を複製できる「サイトパッケージ」という機能があります。プリザンターを初めて使うシステム担当者には、その機能も活用し、業務アプリの共有を促進。こうしたコミュニティが自然発生的に生まれ、相互に助け合えることも、プリザンターを使う醍醐味です。「中小病院は特に人が足りていないのが実情。今後、コア業務は人に任せ、それ以外の業務はプリザンターで補う業務改革を、当院はもちろん、業界全体でも推進していきたい」と、田場氏は話しています。

東香里病院