
柴田 浩司 様(プリザンター関連技術担当)(左)
岡山支社 E&S事業部 主任
森脇 望 様(プリザンター関連窓口担当)(右)
- 業務情報のExcel管理依存を改善するため、オープンソースのプリザンターを導入
- リモートアクセス可能な環境を整備すると共に、情報の検索性を大幅に向上
- オープンソースのチャットツールRocket.ChatやExcelとの連携。QRコードも活用
課題:Excelファイルの野放図な増加と情報の属人化
クラウドサービス利用は、ID課金や有償オプションでコスト増を懸念

株式会社ジェイ・エヌ・エスは、企業向けのITサポート事業を展開しており、パソコンのセッティングからサーバーやネットワークなどのインフラ環境構築、ヘルプデスクサポートなど、
ビジネスに不可欠なITサービスの構築・運用を支えています。また、技術者派遣サービスも手掛けており、派遣されたエンジニアがお客様先でのシステム運用やオペレーションにも携わっています。
さらに、情報セキュリティの国際認証であるISO/IEC27001を取得するなど、信頼性の高いセキュリティ体制の構築に力を入れており、お客様に安心してサービスをご利用いただける環境づくりを進めています。
一方で、同社の社内業務に目を向けると、事業を進めるうえでファイルサーバーとExcelファイルを中心とした情報管理に課題を抱えていました。
「ファイルサーバーに担当者ごとにフォルダーのアクセス権を付与し、業務情報を整理したExcelファイルを共有していましたが、担当者が自由にフォルダーを作成してファイルを配置できるため、
野放図なファイルの増加や情報の検索性の低下が大きな問題となっていたのです。」
そう語ってくれたのは、株式会社ジェイ・エヌ・エスの大阪本社 経営企画室でプリザンターの導入を推進してきた執行役員常務の河本英伸氏です。同社のファイルサーバーは、最上位のフォルダー以外の配下のフォルダーを担当者単位で作成・共有しており、情報管理が属人化しやすく、どれが必要な情報なのか分かりにくいという課題を抱えていました。
必要な情報と不要な情報の区別があいまいになり、削除されずに蓄積され続けることでファイルサーバーの管理コストが増大してしまっていたのです。「この課題を解決できないか数年前から検討を続けて、ドキュメント管理ツールやノーコード開発ツールを評価してきましたが、なかなか決定打が見つかりませんでした」と河本氏は語ります。
クラウドサービスの多くはID単位での課金形態ですが、同社では利用頻度にばらつきがあるため、全員に一律のコストをかけるのは割高に感じていました。また、Excelファイルをインポートするだけで使い始められるサービスもあったが、
いざ使ってみようとするとカスタマイズに手間がかかったり別の有償オプションが必要になったりと、こちらも本格的に採用するにはハードルが高かったのです。さらに案件管理システムなどの専用アプリケーションも検討してみましたが、
月額利用料で何十万円となってしまい同社の規模や費用感に合いませんでした。
こうしたExcelファイルの共有にまつわる課題は、多くの企業で長年に渡って課題視され続けており、同様の問題を抱えている企業もまだまだ少なくありません。そうした中で、同社は情報管理の改善にこれ以上時間をかけられない新たな課題に直面することになるのです。
システムの導入:新型コロナ禍への対応でリモートワークが必要不可欠
自社サーバーで管理できるオープンソースの情報管理ツールを検討

「こうした課題を早急に解決しなければならなくなった大きな理由は、新型コロナ禍によるリモートワークへの対応です。社外から安全にアクセスできる環境を整える必要があり、
情報管理の改善が急務となりました」(河本氏)
リモートワークを進めるためには、業務に関係する情報の整理を個人にまかせるのではなく、会社として把握すべき情報をきちんと管理する体制を整える必要があります。
スタッフの入れ替わりなどがあっても、これまでの作業経緯や業務状況を効率良く共有できる仕組みが不可欠になります。
そこで、改めて自社のサーバーで運用できるオープンソースの情報管理ツールを探しはじめたところ、たどりついたのがインプリムが開発するノーコード・ローコード開発ツール「プリザンター」でした。岡山支社 V.W事業部 サポート2課 リーダーでプリザンターを選定・評価してきた柴田浩司氏はこう語ります。
「全社で使い始める前に、まずは一部署の業務管理にプリザンターを導入しました。少人数で利用開始することで、使用感の意見、問題点なども集めやすく、全社展開時にはある程度の形が整った状態で全社展開できると考えたからです。
また、その段階である程度の使い方を身につけられたので、社内での展開もスムーズに進めることができました」
実際にプリザンターを試してみると、それほど敷居は高くなかったといいます。AWS上でLinuxとPostgreSQLを利用した環境を構築しましたが、技術的な難しさもなくサーバー以外は費用もかからず試すことができました。合わせて、業務の通知ツールとしてオープンソースのビジネスチャットツールRocket.chatを導入。Rocket.Chatを選んだ理由は、プリザンターとの親和性の高さだったといいます。
プリザンターとの連携に関するドキュメントが用意されており、その通りに設定するだけでプリザンターへの更新情報の通知が簡単に実装できたといいます。さらにSAML認証によるシングルサインオンやGoogle Workspaceとの連携も比較的簡単に実現できました。
とはいえ、プリザンターの導入にあたって苦労はなかったのでしょうか。柴田氏は、一番苦労したのはシングルサインオンの導入だったといいます。「SAML認証は、認証サーバーと証明書のトークンをやり取りします。Windows環境なら普通にコントロールパネルで比較的簡単に設定できるのですが、Linuxではそのための参考情報を見つけるのに手間がかかり、試行錯誤が必要でした」
さらに、全文検索機能でトライグラム検索を使うために機能拡張やチューニングが必要でした。また、プリザンターが大幅なバージョンアップを行うタイミングで、.NETフレームワークもバージョンアップする必要があったために、
Linuxディストリビューション自体のバージョンアップも余儀なくされたといいます。「今回、インプリムのサポートサービスを利用せずに導入しました。そのために、トライアンドエラーを繰り返しながら、自分たちで調べる必要がありました。ITサービスを本業にしていないユーザー企業であれば、
サポートサービスを利用するほうがスムーズだと思います」(河本氏)
システムの活用:自社導入でありながらスムーズに導入できたプリザンター
ExcelやQRコードの連携を作り込み現場への定着を図る

現在、本格稼働から1年程度が経過し、以下のような業務管理ツールをプリザンター上に構築しています。
• 受注案件情報/案件経費情報/案件関連入出庫情報
• 社用車利用履歴情報
• 派遣元管理台帳
• ISMS管理の各種一覧
• 既使用の掲示板システムのファイル添付補完
• その他:社内管理向けの多数の帳票
プリザンターの活用を進めたことで、Excelファイルを多用していたころと比較し、情報の検索性が高くなり時間効率は高くなったと感じているそうです。
さらに、セキュアな接続環境も実現したことで、VPNを使わなくても社外から必要な情報にアクセスできるようになり、利便性も大きく向上した。またスマートフォンによるアクセスも可能となり、利用シーンがさらに拡がっています。
ここで、システム運用業務でプリザンターを活用している具体例を見てみましょう。同社ではISMS管理の一環として、お客様からお預かりした機材の管理表を作成しています。システム導入案件に関連してお預かりした機材の入庫状況をプリザンターの入出庫情報管理台帳データベースに入力して、そのレコードのURLのQRコードが付いた伝票をプリントして貼り付けて管理しています。
プリザンターに入庫情報を登録したタイミングでRocket.Chatに通知し、合わせてExcelで管理伝票を出力する仕組みを作っています。この伝票は、あらかじめExcelでひな型を作成しておき、プリザンターから必要な情報を埋め込んで生成しています。Excelファイルの作成にはExcel.js、
QRコードの作成にはQRCode.jsというライブラリを利用しているとのことです。
しかし、プリザンターでお預かり品の管理を始めた当初は、簡単には定着したわけではありません。「紙でやっても手間が変わらない」「慣れたやり方のほうがいい」という声も多く、現場には変化への抵抗感があったといいます。そこで、伝票に印刷したQRコードをスマートフォンで読み取ると、
該当の在庫情報が表示されるように改善しました。これによって品物と情報を紐づける手間が少なくなり、また、出庫時の情報の記録も簡単に出来るようになったことから、現場でもプリザンターの活用が受け入れられるようになったのです。この他に運用上の工夫としては、プリザンター内のフォルダを色分けして視認性を高める取り組みも行っています。
同社は、大阪・東京・岡山と複数の拠点があり、それぞれの組織ごとにフォルダの色を変えることで、サブフォルダに深く入っていっても、どの拠点の情報を見ているかが一目で把握できるようになりました。
このように、現場の声を取り入れた小さな工夫を自分たちで進めることが、業務の効率化と信頼性の向上において大きな効果を発揮しているのです。
今後の展望:オープンソースの評価から広がる可能性
自ら調べて導入し、低コストで長期間検証を実現

では、業務でオープンソースソフトウェアを使うことに不安はなかったのでしょうか。プリザンターを評価した柴田氏は、次のように語ってくれました。「商用製品を購入しても、思うようにいかなくて結局自分で調べることはよくあります。
それならば、オープンソースでソースコードを見て解決できる方がいいと感じていますので、今後もオープンソースを積極的に試していきたいと思っています」(柴田氏)
最近では開発に必要なツールや環境もオープンソースで提供されるようになり、さらにAIの発展もあって、簡単なスクリプトを書く程度であれば高度な技術力が不要になりつつあるという背景があり、オープンソースを使うリスクが以前よりも低下しているのだといいます。河本氏も、オープンソースのメリットについて次のように説明します。
「オープンソースであれば、検証期間を無期限で設けられます。商用製品で例えば試用期間が3ヶ月あったとしても、通常業務をしながらではなかなか試す時間を確保しにくく、月次作業で使うケースであれば1-2回しか試すことができません。
その点、オープンソースであれば、初期評価や導入の敷居がコスト面でも小さくなるので、自前でサーバーを運用してツールを評価する際に大きなメリットがあります」(河本氏)
最後に、ジェイ・エヌ・エスではプリザンターを活用した情報管理を今後どのように進めていくのか説明していただきました。まずは、会社として管理すべき情報は、すべてプリザンターに集約していく方針だということです。
自由に表を作りたい場合はExcelで対応しながらも、その場合は例外として自由にアクセスできる場所に限定して住み分けていく。管理すべき情報はプリザンターで、管理しなくてもいい情報はExcelで、というやり方でそこは徹底していくという考えです。次に、ファイルサーバーをできるだけ小さくしていきたいとのこと。
使わない情報を貯め込んでも保管するのにコストがかかり、ストレージを稼働させていると放熱が増えてエアコン代もバカにならないためです。
「今後は、プリザンタービジネスでも、導入支援やサポートサービスで貢献していきたいと考えています。プリザンターの導入支援を行うパートナー企業に対しても、私たちの業務運用や常駐サポートの強みを活かして協業を実現する体制を強化していきたいですね。
プリザンターの広がりと共に、多くのお客様の活用を支援していきたいと考えています」と河本氏は話してくれました。
