- 紙と Excel で行っていた文書管理をプリザンターに移行し、検索と確認作業が大幅低減
- ワークフローシステムへの活用で、案件共有と適切な人員配置、ナレッジの相互利用まで可能に
- 小規模 EC 事業者向けの物流システムに組み込み、フルフィルメント※に近いサービスも提供 ※荷受、在庫管理、受注、出荷までのトータルサポート
課題:中期経営計画で売上高 100 億円を目指し、DX を本格化
文書管理からワークフロー、EC 物流システムまでプリザンター活用へ
共同物流サービス(以下、共同物流)は、北東北を地盤とし、9 拠点の物流センターを運営する地方の中堅物流会社です。現在、売り上げ規模は年間約 55 億円ですが、中期経営計画では 100 億円を目指しています。大手飲料メーカーの青森拠点の物流に加え、中小企業や個人事業主の物流を請け負い、新たに仙台で大規模な物流センターを受託するなど、現在はまさに業容拡大期となっています。
事業規模が大きくなる中、浮き彫りになってきたのが、管理部門や取引先の業務が増え、負荷が増大していることです。「従来は青森県内の拠点で目の届く範囲で事業を行ってきましたが、一年前には仙台に進出するなど業容を拡大しています。今後、バックオフィス業務が追い付かない状況も予想されます」と、共同物流サービス人事教育課の山田勇太郎課長は話します。
業務負荷が大きい原因の一つが、紙ベースによる管理や非効率なワークフローと営業、電話のやり取りや帳票の手書き、手入力に忙殺される EC 物流など、効率化が図られていないことです。解決するためには、各々に DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入し、“脱アナログ”によって業務を進化させる必要があります。
共同物流が DX に関して、青森県に拠点を構え、物流会社のシステム構築を支援するシステム会社、アイティークレストに相談したところ、提案を受けたのがプリザンターを活用することです。実はアイティークレストでは、数年前から社内の日報管理でプリザンターを使い、様々な業務に応用できる手応えを感じていました。同社は共同物流に導入を提案するにあたり、プリザンターを開発するインプリムとパートナー契約を締結。プリザンターを使ったソリューションを本格的に提供する体制を整え、共同物流の DX プロジェクトの推進をスタートさせたのです。
システムの構築:プリザンターによって契約書・文書管理システムを低コストで実現
ワークフローシステムも構築し、状況とナレッジの共有が可能に
最初に着手したのが、契約書・文書管理でのプリザンターの活用です。従来、共同物流では、契約に関連する文書を全て紙の台帳で管理し、Excel を使ってリストを作成していました。「当社では約 300 社の取引先と契約書を交わしており、年 1 回、更新が必要かなどの内容の確認を行っています。リストを基にいちいち棚から紙の台帳を引っ張り出すなど、作業に手間がかかるのが課題でした。また、年間を通じ、営業社員から契約内容の確認を依頼されることもあり、その都度台帳を見なければならない点もネックでした」(共同物流サービス総務経理課の川越智幸氏)。
プリザンターであれば、標準機能だけで、リードタイムもコストも最小化して、文書管理システムの構築が可能です。早速アイティークレストが構築し、契約書を PDF で電子データにして保管しつつ、プリザンター上で一覧リストで管理する方式に移行。「外出先の営業社員から確認を依頼されても、パソコンを使ってウェブ上で見て即座に応答できるようになり、それだけでも管理部門の負荷は大きく低減されています」と川越氏は言います。
次に取り組んだのが、共同物流とアイティークレストの間で、プリザンターを使ってワークフローシステムを構築することです。導入前は、共同物流の配送部門や構内部門など 20 部門の部門長から、アイティークレストの複数の担当者に個別に新規開発や機能追加の要望が寄せられていました。そのため、アイティークレスト側の責任者が個々の案件を把握できず、一人の技術者に業務が集中したり、技術者が独断で導入したシステムで問題が発生したりするなど業務に差し障りが出ていたのです。そこで、プリザンターを使ったワークフローシステムを作り、全ての開発案件を共同物流-アイティークレスト間で共有する仕組みを構築。共同物流からの案件の依頼と、アイティークレスト側の対応状況のステイタスが全て可視化され、責任者による技術者の適切な人員配置も行えるようになりました。「部門長同士も互いの依頼内容が見える化され、参考にできるようになったと好評です。今では、『何が起きているのか』に加え、アイデア、改善提案などナレッジも共有できる仕組みとして動いています」(山田氏)。共同物流では、今後、社内全体のワークフローシステムとして、プリザンターを活用することも視野に入れています。
システムの進化:営業や EC 物流もプリザンターの導入で効率化
EC 事業者は売り上げ増大でも残業ゼロを実現
共同物流では、営業部門でも管理上の課題を抱えていました。それは、営業社員の取引先との面談記録が Excel に入力され、個々のノート PC に保存されていたため、一元管理されていなかったことです。社員は面談記録を上司など関係者にメール添付で送っていたものの、ファイルサーバーに保存・共有するルールが守られず、貴重なデータが会社の情報資産として蓄積されていない状況が続いていました。個々も PC 内のファイルから取引先の必要な情報を探すのが一苦労であり、情報の共有不足のため、営業担当が休んだり、引き継ぎをしたりする際も、支障が出るリスクがある状況でした。
そうした中、共同物流で新たに取り入れたのが、プリザンターを使った営業支援システムです。取引先のデータを顧客マスターとして登録し、日々の面談記録を過去の分も含めてマスターと紐づく形でプリザンター上に保存する仕組みを構築しています。「営業社員は外出先でも PC からプリザンターにログインすることで、これから訪問する企業の情報や過去の打ち合わせの内容、どんな資料を提出したかを簡単に参照でき、直後の面談に役立てられる点が非常に重宝しています。プリザンターはキーワードによる検索が速い点もメリットを感じています」と営業支援を行っている、共同物流サービス営業企画課の北川明香課長は話しています。
さらに、共同物流は取引先の EC 事業者向けに、各 EC モールからの受注から発送までを一括管理できる物流支援システムの提供も始めています。EC 事業者の中規模拠点には他社のEC一元管理パッケージを共同物流の倉庫管理システム(WMS)に接続した統合システムを提供し、大幅な効率化を実現。一方、EC一元管理パッケージを導入するには費用対効果が低い小規模拠点には、低コストでの導入が可能なプリザンターを組み込んだシステムを提供しています。 プリザンターによるシステムでは、EC事業者が消費者からの注文内容をプリザンターに受注データとして登録します。登録された受注データは自動で共同物流のWMSと連携され、ピッキング指示データを基に出荷から発送作業まで行います。システム間の自動連携により迅速かつ効率的で抜け漏れのない発送が実現しています。 これらの物流システムにより、EC 事業者はフルフィルメントに近いサービスを受けることが可能になっています。この EC 事業者は、導入以前、繁忙期は各帳票の手入力や手書きに時間が掛かり、社員総出でも毎日 23 時までの残業を余儀なくされていました。それが、物流システムの導入によって、売り上げが好調で増大したにも関わらず、残業はゼロになっているとのことです。「今後、中規模 EC 事業者にはEC一元管理パッケージ、小規模事業者にはプリザンターを組み入れた物流システムを積極的に提案していく」と、アイティークレストの一本松猛路室長はコメントしています。
今後の展望:高信頼性DBを組み込み、AWS でセキュアなウェブデータベースを構築
実績のある業務改善システムを“プリザンターモデル”として横展開
アイティークレストの支援を受けながら、プリザンターの活用を進めている共同物流ですが、自社や顧客の大切なデータを着実に管理するための施策にも力を入れています。データは AWS を使ってクラウドで管理していますが、パフォーマンスの向上と万全のセキュリティを担保するために、富士通株式会社がエンタープライズ向けに提供している、PostgreSQLをエンジンとして「セキュリティ」「性能」「信頼性」を強化したFUJITSU Software Enterprise Postgres(以下、FEP)を組み込んでいます。 「FEP はプリザンターとの連携実績があり、DB暗号化などのセキュリティも担保されています。富士通様の手厚いサポートも受けることができるため、採用しました。また、プリザンターに関してもインプリム様のシステムとの連携に関するサポートや技術情報の提供、勉強会の実施などの支援を受けており、開発者側としても非常に助かり、心強く思っています」(アイティークレストのシステム開発課 辻村和弘氏)。
契約書・文書管理システムでは、共同物流が項目を自ら追加して管理することも始めています。例えば、約 700 件もある ISO の手順書関連の文書を PDF でプリザンター上に保存し、画面上で検索・確認する方式に切り替えています。こうしてベンダーに頼らずとも、ユーザー側で臨機応変に使い方を改変できることも大きな利点です。 地方のショッピングセンター(SC)では、デベロッパーとテナント間の情報回覧や売り上げ報告などを、まだ紙ベースで行っている例もあります。今後、アイティークレストでは、共同物流で実績があるナレッジの共有システムを様々な SC に提案し役立てて頂く予定です。 また、EC の物流支援システムも小規模事業者向けに有用と考えています。低コストかつ素早く導入できる、こうした“プリザンターモデル”は、地方の事業者も取り入れやすく、共同物流とアイティークレストは協業で、地域の事業者に貢献していく計画です。
株式会社アイティークレスト本社社屋