- データの移行先には様々なサービスも検討したが、費用面で有利なプリザンターを選択
- コストの優位性に加え、コードを追加で書くことによって、自由に機能拡張できる点を高く評価
- メーカーからの技術サポートを受けながら必要な機能の作成を進め、スムーズな移行を達成
導入背景:全社的な利活用が進む情報共有基盤の構築を模索
既存Webデータベースのサポート終了発表により移行先の選定が急務に
フジクリーン工業株式会社(以下、フジクリーン)は、「美しい水を守る」理念のもと、排水処理システム(浄化槽等)の開発、製造、販売、メンテナンスサービスを行っているメーカーです。日本では人口の約9%が浄化槽を利用しており、同社は個人住宅、業務施設(飲食店、共同住宅、工場等)に製品を提供し、国内シェア45%を誇るリーディングカンパニーとなっています。また、海外展開にも注力。 高い水処理技術力、行き届いたサービスを強みに、日本と先進国を中心に事業を拡げています。
「事業が拡大し、業務が複雑になるにつれ、情報共有の重要性を強く感じるようになった」と情報システム課の松本直樹氏は話します。全社統一的な情報共有基盤がなく部署毎別に情報を公開していたため、どこに何があるのかわかりにくく、欲しい情報の取得に時間を要していました。また、部署毎に独自に運用していることも情報共有の妨げになっており、運用ルールの統一化と情報集約が必要だと考えていました(松本氏)
そうした中、技術的な資産である浄化槽の図面や設計書などのデータを保管・検索・共有するツールとして使っている既存のWEBデータベースの販売とサポート終了が発表されました。フジクリーンでは、期日が来る前までに、他のWEBデータベースに全てのデータを移行することが必要となり、移行先となるツールの情報収集や選定を待ったなしで進めざるを得なくなったのです。
システムの選定:コストパフォーマンスの高さからプリザンターを選定
あらゆるカスタマイズが可能で、作成するテーブル数、ユーザ数も無制限
移行するWebデータベースの候補としては、様々なサービスがリストアップされました。オープンソースソフトウェアで利用には料金が掛からず、導入支援や年間サポートサービスが有償提供される「プリザンター」も候補でした。その中で、プリザンターを選んだ理由を、松本氏は次のように話します。「年間サポートサービスなどを有償で受けたとしても、そもそもの利用が無料のため、他の選択肢より圧倒的にコストが圧縮される点が魅力でした。また、プリザンターは少しのコードを書き加えることによって、自由に機能を拡張できる柔軟性があることもポイント。以前のWebデータベースで使っていた機能を担保しつつ、自社向けに新たな活用が行える可能性があることを評価しました」。
さらに、以前のWebデータベースでは業務ごとにデータを保管するライブラリ数に制限がありましたが、プリザンターでは無制限にテーブル(ライブラリ)が作成できることにも価値を感じたそうです。「以前のWebデータベースは、技術系の各部署が管理を担っていました。そこを今回の移行を機に、情報システム課が集約して管理を行うことに変更。技術系のデータベースだけでなく、生産部や総務部などより多くの部署での活用を想定しており、テーブルの作成数が無制限であることは広範な展開を進める上で大きなメリットでした」(松本氏)。こうして様々な点で優位性のあるプリザンターを移行先に選定し、導入の作業を進めていったのです。
導入:トレーニングサービスの受講で操作方法をしっかりマスター
サポートサービスを活用し、混乱の無い円滑なデータ移行を達成
導入に当たり、プリザンターを提供するインプリムに依頼したのが、その操作方法を短期間で学習できる「トレーニングサービス」です。「サービス受講前に、参加する情報システム課の部員で実際にプリザンターをある程度操作し、分からない点を集約してから臨みました。そうして事前に触れておくことで、学習効果が高まり、有効な質問もできたと考えています。受講後、2週間はメールで質問ができるため、それも活用し、使い方をマスターしていきました」(松本氏)。そうして、一定のスキルを身に付けた上で、以前のWebデータベースからプリザンターへのデータの移行に着手。基本的には、プリザンター側に以前のWebデータベースと同様の項目のテーブルを作成し、データをCSV形式で出力してプリザンターにインポートする作業を行います。不明な点は、プリザンターのサイトで提供しているFAQやコラムである程度調べることができます。添付ファイルの移行は標準機能ではできなかったため、現場の写真や図面など数百のファイルだけは、一つひとつ手作業で移行する手順でした。
ただし、懸念点だったのが、同社の情報システム課の知見だけで移行ができるかということです。「トレーニングやFAQなどによって基本は押さえられるものの、それらだけでは分からないことが生じた時、対処できなくなることを不安に思っていました」(松本氏)。
そこで、同社が頼りにしたのが、有償で提供されるプリザンターの年間サポートサービスです。移行作業の中では、サポート専用のWebサイトを通じた質問を積極的に行ったと言います。「FAQやコラムで書いてある通りにやっても、環境の違いなどによりうまくいかないこともあります。そうした際、質問をすると、迅速に回答が返ってくるので、とても重宝しました」(松本氏)。
カスタマイズを行う上でも、サポートは役に立ったそうです。今回の移行では、以前のWebデータベースのライブラリにあったデータが、プリザンターのテーブルのどこにあるのか、ユーザーが分からずに混乱することが予想されました。対策として行ったのが、以前のWebデータベースとプリザンターの対比表をトップページに掲載することです。例えば、前のWebデータベースの「標準設計図書・製作仕様書・営業提案資料等」は、プリザンターの「調べる」というフォルダにあると分かりやすく示しています。「このトップページを作る際も、年間サポートサービスの担当者に様々な質問を行いました。その過程では、提示されたサンプルコードなども活用し、最終的にページの作成を実現。移行後、『このデータはどこにあるのか』といった問い合わせはなく、ユーザーは戸惑うことなく、プリザンターを使うことができています」(松本氏)。
今後の展望:営業の情報共有もプリザンターを活用
以前のWebデータベースではできなかったことも移行を機に一気に加速
フジクリーンでは、技術系以外の部署でのプリザンターの活用も積極的に行っています。その一つが、営業向けに作成した「マーケットインフォメーション」というテーブルです。これは、全国の営業が週に一度、有用なビジネスの情報を入力し、蓄積、共有するもの。従来は、メールで本社の営業部に集約し、Excelにまとめて関係者に送付していましたが、営業担当者がプリザンターに直接入力する方式に切り替えました。項目が決まっているため、情報が整理されて見やすく、検索によって欲しい情報も入手しやすくなっています。「当社は営業部員が100人以上と組織の中で最も大所帯。その社員が週に一度は入力のためにプリザンターを使用することで、Webデータベースを使う習慣が身に付くことがポイントです。その際、他のテーブルの存在に気づき、プリザンターの活用が進む事に期待しています。」(松本氏)。
一方、総務部・経理部がリース管理表をプリザンター上に作り、運用するなど、さらなる活用の広がりも見せています。また、今後の計画として、一つの浄化槽で何十点とある部品を図面・写真付きでデータベース化し、部品検索機能として使う構想もあります。「以前のWebデータベース時代にはできなかったこともプリザンターを導入したことで一気に加速しています。これからも年間サポートサービスを利用しながら、組織の情報共有を推進していきたいと思います」(松本氏)。
フジクリーン工業株式会社 社屋