- Excelとメールで行う従来の業務では部門間のデータ連携が図れず、“野良マクロ”の存在も問題に
- インプリムのWebデータベースを採用し、年間サポートサービスによる支援で内製化体制を確立
- アプリ開発を内製化するうえでの運用ルールを整備し、品質とガバナンスを担保
課題:コア業務に人的リソースを集中させるためにDXを推進
課題はExcelによる属人化、メールや紙で業務が管理しきれていない事と増加するマクロへの対処
KHネオケムは、塗料の原料になる溶剤、プラスチックを柔らかくする添加剤である可塑剤の原料などの基礎化学品から、エアコンや冷凍機器に用いられる特殊な潤滑油(冷凍機油)の原料などの機能性材料、フラットパネルディスプレイや半導体の製造プロセスに必要な高純度溶剤といった電子材料まで、幅広い産業分野に特色ある石油化学製品を提供する東証プライム上場の化学素材メーカーです。事業を通じて社会課題解決に貢献し、同社自身も持続的に企業価値を向上するサステナブル経営を推進しています。
これらに必要なコア業務に人的リソースを集中させるために取り組んでいるのが、業務改善や効率化につながるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。同社IT統括部でDX推進担当として活動する西嶋氏は、DXを行うことになった背景を次のように振り返ります。「社内の業務は個々がExcelやメールを使って行っていますが、チームや部署の中だけでデータや情報が閉じてしまっており、部門間で横の連携がうまく取れておらず非効率的なことが課題となっていました。また、そうしたユーザー部門では、IT統括部が作成したものではないExcelマクロである、いわゆる“野良マクロ”が多数存在していたことも問題でした。”野良マクロ”自体は個々の業務を効率的に処理するために作られたものですが、特定の個人に依存したシステムであるケースが多く、作成者が異動や退職により業務から離れた場合、メンテナンスやサポートが困難になり、業務の安定性や継続性に悪影響を与える可能性が高いのです」
作成者が業務から外れてしまった野良マクロの対処に困り、IT統括部にメンテナンスの依頼が来ることも何度かあったと言います。しかし、IT統括部もリソースが限られており、断る事もありました。こうした、属人化による弊害が同社のDX推進に悪影響を及ぼしていることは明らかであり、IT統括部の監視およびガバナンスの下にシステム開発の民主化を実現するための体制の整備と、開発ツールの導入が必要となったのです。
システムの選定:DXの切り札としてインプリムのWebデータベースを選択
運用設計を着実に行い、品質とガバナンスを同時に担保
KHネオケムのIT統括部では、DXを行うための施策として、Webデータベースを活用することを模索し、IT系の展示会やフォーラムに参加して探索するなど、検討を重ねてきました。そうした中、目に留まったのが、インプリムが提供しているWebデータベース型のビジネスアプリケーションプラットフォームです。このWebデータベースの印象を、IT統括部の半田氏はこう評価します。「インプリムのWebデータベースはノーコード/ローコードで業務に必要なアプリケーションを独自に作成できる点が魅力でした。さらに決め手となったのが、標準で用意されているビュー機能の種類が多い事です。この充実したビュー機能は他社のWebデータベースにはない優位性であり、この機能があればユーザー部門の日常業務に簡便な操作でスムーズに実装でき、現場の担当者でも自由にカスタマイズして活用できると判断したのです」。
ただし、ノーコード/ローコードで簡単に実装できるとはいえ、仕組みやルールを決めないまま、運用を現場任せにしてしまうと、従来の野良マクロのようなアプリケーションが多数増殖し、ガバナンスが効かなくなるリスクがあります。そこで、このWebデータベースを導入するにあたり、IT統括部が最初に行ったのが、しっかりとした運用設計を定めることです。「要件定義やアプリケーションの仕様・設定をまとめる共通テンプレートの用意や、開発環境と検証環境、本番環境を作って開発・検証を行うことなど、運用のルールと必要なツールの整備を進めました。こうして事前に運用設計を着実に行うことによって、アプリケーションを内製化する中で重要となる品質とガバナンスを担保する環境と体制を整えていったのです」(半田氏)
システムの導入:年間サポートサービスを契約し、SDKの利用や社内開発の支援に活用
サポートの問い合わせに対するレスポンスが速く、手厚い支援を実感
運用設計を行う過程で、課題となったのが開発環境から検証、本番環境への移行を、手間なく円滑に行える仕組みを整備することです。その課題に対し、同社が支援を依頼したのがインプリムです。インプリムが提供する年間サポートサービスを契約することによって、自社のエンジニアだけでは解決できない高度な質問に対する回答を得たり、助言を受けたりすることができます。「早速、インプリムのサポートサービスの窓口に問い合わせると、開発環境から検証、本番環境へのデプロイやソースコードの管理方法など社内開発を効率的かつ安全に行うためにSDK(ソフトウェア開発キット)を活用することを提案され、その活用方法を丁寧に指導いただき、開発環境から検証、本番環境にスムーズにデプロイできる環境を構築することができました」(西嶋氏)
一方、このWebデータベースの活用範囲を広げていくため、汎用的な機能の開発支援をインプリムに依頼しています。例えば、PDFを帳票出力する機能や、APIやサーバスクリプトを拡張し、CSVのデータを連携させることで他システムとマスターを共通化する機能などです。
その依頼に対し、インプリムではWebデータベースの標準機能として追加開発し、本体に実装することで対応しています。「自社でそうした機能を個別にカスタマイズ開発して運用する選択肢もあります。ただ、自社で開発してしまうと、Webデータベースのバージョンアップ時にカスタマイズ開発した機能を自社で更新する必要性が生じ、負担が大きくなる可能性があります。その点、標準機能として実装されれば、改修はインプリム側で行うため、本体がバージョンアップしても、自社の負荷を最小限にできます」と、IT統括部の松澤氏は説明します。また、KHネオケムの要望により追加された機能が標準機能として本体に取り込まれることによって、他社もこの機能を使えるようになり、ソフトウェア自体の成長に貢献できるという、オープンソースのエコシステムが体現される好例にもなっています。
加えて、松澤氏はインプリムのサポートサービスに関しても、こう話します。「初めて使うツールでは、どうすればいいか行き詰まることが多々あります。そういった際に質問するとレスポンスが速く、すぐに回答してくれる点は、非常に助かったという印象です。アプリケーションの開発方法に関する最善策の提案や、開発の参考になるサンプルコードの提供も随時行われ、手厚い支援であると実感しています」
今後の展望:ユーザー部門で活用できるアプリケーションを開発して社内に展開
ユーザー部門でもアプリケーション開発を担える組織への進化を目指す
運用設計を行い、基盤の機能拡張も順次進めた上で、IT統括部が注力するのが、このWebデータベースを使ってユーザー部門で活用できるアプリケーションを開発し、社内に展開していくことです。「まずは、契約書の法務チェック業務、法務相談業務のアプリケーションを開発し、導入していきます。従来、これらの業務はグループメールに受信した情報をExcelに転記して管理していたため、転記の誤りや漏れが生じるなど、問題が発生していました。今後は、個々のユーザーが直接アプリケーション上に依頼を入力し、法務担当者も回答を入力したり、ステイタスを確認しながら案件を管理することが可能になり、些細なミスは防止できるようになるでしょう」(西嶋氏)
同社ではさらにワンランク上の取り組みも目指しています。それが、運用ルールにのっとり、ユーザー部門自らがプラットフォーム上にアプリケーションを開発し、導入を図る活動を促進させることです。「結局、業務を理解しているのは現場の担当者。IT統括部のみが開発を行うとIT統括部のリソースが足かせでDX推進のスピード感がなくなってしまう。現場の担当者が自ら開発と運用を行うアプローチで効率的にスピード感をもった推進を目指しています」(松澤氏)。
当初は各部門に配置したDX担当者を中心に推進していく計画です。そして、将来的にはユーザー部門が業務効率化に必要なアプリケーションを作成できることを目標にしてします。