- 15年以上使い続けてきたWebデータベースの移行先としてコストと機能性の観点からプリザンターに移行
- 独自にスクリプトを開発し、難関である「添付ファイルの移行」も自動化できる仕組みを導入
- ユニ・チャームが企業として設定している厳しいセキュリティ基準にも準拠するシステムを構築
課題:長年使ってきたWebデータベースのサポート終了が間近
利用人数によるユーザー課金体系ではコストが大幅増に
ユニ・チャームは生理用品や紙おむつを世界で約80の国と地域に展開し、売上高は7,827億円(2021年12月期)と5年連続過去最高を更新中。海外売り上げ比率が6割以上に上るグローバル企業です。
そうしてグローバルでビジネスを進める中、国内外の社員がナレッジを共有するため、15年以上にわたりWebデータベースを運用してきています。しかし、近年、問題となったのが、その当該Webデータベースのサポートが終了し、一切使えなくなることがアナウンスされたことでした。
当該Webデータベースは、同社のマーケティング本部をはじめとして複数の部門でも利用されており、全社的な情報共有基盤として運用しています。しかし、「それが使用できなくなるというのは当社にとっては一大事でした」と、同社のDX本部デジタルマーケティング統括部の東上泰樹氏は当時を振り返ります。
東上氏は独自に移行先を探すことも試みており、有力な候補として挙がったサービスもいくつかありました。ですが、それらのサービスでネックとなったのがコストです。「料金体系が、1ユーザーごとに月額いくらというユーザー課金形式でした。Webデータベースは基本的に当社の全社員が利用するため、そうなると途方もない金額が請求されることになります」(東上氏)。立ちはだかるコストという高い壁。そうした中、終了する当該Webデータベースの保守運用を以前から担当していた、SI会社のクロス・ヘッドから受けたのが、「プリザンターというオープンソースのWebデータベースに移行することで解決できるのではないか」という提案だったのです。
システムの選定:移行先は認定パートナー企業提供の「プリザンター on AWS」
コスト面の優位性に加え、UIの操作性や検索性にも好印象
プリザンターの認定パートナー企業であるクロス・ヘッドですが、同社では他にも様々なITソリューションを扱っています。その中でユニ・チャームの案件にはプリザンターが最適だと判断した理由を、クロス・ヘッドの営業担当者はこう話します。「プリザンターでシステムを構築した場合、ユーザー数による費用増を考える必要がない点は大きなメリットです。加えて、ユニ・チャーム様は当該WebデータベースをAWS環境で使っているため、AWS上にも構築できるプリザンターであればスムーズに移行できることもポイントでした。つまり、クラウド基盤での運用というユニ・チャーム様が従来から使ってきた環境を踏襲でき、なおかつコストが抑えられる点で、プリザンターへの移行が最も現実的であると提案したのです」
提案を受けて、ユニ・チャーム側でもプリザンターの操作性を徹底的に検証。「コスト面で優位でも一番大事なUI(ユーザーインターフェース)の操作性に問題があれば、当然のことながら現場で受け入れてもらえない」(東上氏)と考えていたからです。そこで、既存Webデータベースとの操作性や機能面での差異の検証を行い「これなら、当該Webデータベースと遜色のない使い勝手を保持できると思った」と、東上氏は言います。「画面がシンプルで非常に使いやすく、これならユーザーも戸惑わないだろうと感じました。また、複数のキーワードでデータを絞り込めるなど高い検索性は今まで使っていたWebデータベースにはなかった利点。投稿に対して他者がコメントを残せるなど、ユーザー同士でコミュニケーションのやり取りができる点も、評価できる機能でした」。こうして、ユニ・チャームでは、プリザンターの採用を決め、移行プロジェクトをスタートさせたのです。
システムの運用:データの抽出も取り込みもワンベンダーが担える安心感
膨大な数の添付ファイルもスクリプトの開発で自動移行
長年の懸案だったシステムの移行では、いくつか重要な要点がありました。中でも、東上氏が「この点が大きかった」と指摘したのが、クロス・ヘッド一社だけで、旧システム(当該Webデータベース)からのデータの抜き出し、新システム(プリザンター)の構築からデータの復元まで、すべてのプロセスを担えたことです。「データの抽出と取り込み、環境の構築が別々のベンダーですと、その間を仲介する必要が生じ、大きな不安材料になります。そのすべてをワンベンダーで対応できる点は、当社にとっても安心感がありました」
さらに、ユニ・チャーム側が評価したのが、クロス・ヘッドのエンジニアが発揮した技術力です。その点でハイライトとなったのが、旧システムからプリザンターへの添付ファイルの移行でした。「15年以上掛けて蓄積してきた添付ファイルの数は膨大です。旧システムを提供していたベンダーのWebサイトを見ると、『添付ファイルは自身でダウンロードして移行してください』とサラッと書かれており、途方に暮れていました」(東上氏)
そこで、クロス・ヘッドが検討したのが、添付ファイルを自動的に移行する方法です。クロス・ヘッドの技術担当者は、その経緯を次のように話します。「添付ファイルの移行は、プリザンターを導入する際の最大の課題だと認識していたため、当社の開発メンバーに相談したところ、スクリプトを作ればプリザンターに自動で流し込めるという検証結果が出ました。その方法を採用し、システムに組み込むことで、全く問題なく、添付ファイルもスムーズに移行することができたのです」
一方、もう一つの課題となったのが、ユニ・チャームが会社として設定していた厳しいセキュリティ基準に準拠することです。「当社の中では『SI確認リスト』と呼ばれ、何らかのシステムを導入する前に必ず準拠しなければならない基準。具体的には、WAF(Web Application Firewall)の構築やLogの取得・管理、アンチウィルス、監視運用などのセキュリティ対策が施されている必要があります。これに対しても、クロス・ヘッドがしっかり対応し、問題なくクリアすることができました」(東上氏)
無事システムの移行が完了し、本番稼働時、ユニ・チャームでは、システムを変えたことを社内向けには詳しく案内せず、リンク先を旧システムからプリザンターに変更し、自然にユーザーが使い始める形で運用をスタート。これが「全くハレーションを起こさずにうまくいった」と東上氏は言います。「問い合わせが来たり、社内で混乱が起きたりすることが一切なかったのです。UIが良く、直感的に使えるとは予想していましたが、これほどまでに現場で円滑に移行が進んだことに、改めてプリザンターの操作性の良さを実感しました」
今後の展望:ナレッジ管理にとどまらず、承認ワークフロー機能も実装へ
認定パートナー企業のプロジェクトマネジメント力も高く評価
ユニ・チャームでは、プリザンターへの移行が成功したことから、次のステップも検討し始めています。東上氏の下で業務を行うDX本部デジタルマーケティング統括部の中村翔太氏は、こう説明します。「今、使っているようなナレッジデータの管理だけでなく、プリザンターの標準機能として実装されている承認ワークフローの機能も活用していきたいと思っています。例えば、設備予約システムと承認プロセス管理をプリザンター上に構築するイメージです。現時点でも他社のワークフローシステムを使っていますが、利用人数によるユーザー課金体系がありコストが掛かっています。それをプリザンターに移行することでコストの圧縮も図れると考えています」
こうしたシステムも、今後、クロス・ヘッドに相談し、実装していく計画です。「クロス・ヘッドには、今回の案件で初めて本格的なシステム構築を依頼しましたが、課題管理やスケジュール管理、納期遵守など、リリースまで安定感と安心感のある進め方で、プロジェクトマネジメントが非常にしっかりしているという印象を受けました。今後もプリザンターの機能を余すところなく使うために、信頼できるクロス・ヘッドの力を借りていきたいと考えています」(東上氏)
ユニ・チャーム本社 エントランス