りそなグループがRPAで年間130万時間の業務削減を達成
プリザンターとの連携が大きく貢献し、年間41万時間の削減に寄与

株式会社りそな銀行 プロセス改革部 AI・RPA推進チーム
(株式会社りそなホールディングス兼務)
グループリーダー 荒木 敏郎 様
  • AI・RPA推進チームを設置し、年間100万時間の業務削減を目標にRPA活用施策を開始
  • システム化されていない多くの業務をプリザンターに置き換えて改善していくことを決断
  • 紙の管理簿を繰り返し回覧する事務をデジタルワークフローに切り替え業務負荷が大幅減

現状:近年注力するグループ全体の業務効率化の一環でRPAを導入
AI・RPA推進チームを設置し、システムをアジャイル開発で内製化

AI・RPA推進チームのSEが常駐しているロボ工房(ロボラボ)

りそな銀行は、りそなホールディングス(HD)傘下のりそなグループの銀行であり、顧客の財産管理を行う「信託」併営銀行としては国内最大級です。同じ傘下の埼玉りそな銀行、関西みらいフィナンシャルグループと合わせた、りそなグループ全体の総資産は約78兆円に上り、3大メガバンクに次ぐ規模となっています。

そうした中、近年注力しているのが、グループ全体の業務効率化です。2017年6月にはRPA(ロボティックプロセスオートメーション:人が行ってきた業務をソフトウェアロボットによって自動化する技術)を試行導入し、同年12月、りそなHDのデジタル化推進部(現プロセス改革部)に「AI・RPA推進チーム」を設置。以来、デジタル化・プロセス改革の一環として、りそなグループ全体にRPAの導入、活用を推進しています。

興味深いのが、本部各部のユーザー部門担当者自らがRPAを中心としたシステムを“内製化”していることです。AI・RPA推進チームは、RPA基盤の整備、RPAのライセンス管理、技術情報の収集や共有、大型案件の開発など、全体の統括・サポートに徹し、必要なシステムは現場を深く知るユーザー部門担当者が構築する体制を整えているのです。同チームのグループリーダーの荒木敏郎氏は内製化することの利点をこう話します。「ベンダーに外注すれば時間もコストもかかります。それを、ユーザー部門で、アジャイル開発することによって、タイムリーかつ低コストで、必要な時に必要なシステムを導入することが可能になるのです」

同チームでは、外部ベンダーから派遣された6人のSEが常駐する「ロボラボ」を設置し、経験ゼロのユーザー部門担当者でもマンツーマンで研修や横に付いて教える支援体制を整備。また、月例開催の「プロセス改革担当者連絡会」では、グループ各社・各部の新たな取り組みや成功事例などの情報共有も図っています。こうした手厚いサポートにより、開始から約6年間でユーザー部門でのRPA開発経験者は約400人にも上り、稼働中のRPAの数は実に3000を超えるレベルにまで、拡大することに成功しているのです。

課題:RPA導入を積極的に推進、当初の目標として年間100万時間の削減
システム化されていない業務にメスを入れ、さらなる効率化を追求

ロボットアームとRPAを連携させて効率化を実現

当初、AI・RPA推進チームで掲げたのは「2022年3月までにグループ全体で年間100万時間(500人分)の業務量を削減する」という目標でした。RPA導入は、単純事務の自動化から始まり、AI-OCR(AIを用いた光学文字認識)・BPM(ビジネスプロセス管理)ツールとRPAとの連携、ロボットアームとRPAによる勘定系端末の操作の自動化など様々な業務で推進され、着実に成果を積み上げていきました。「途中、期限内の100万時間削減の到達が視野に入り、追加で別の施策を投入して課題解決を図ることにより、さらに削減時間を増やせるのではないかと、検討するようになった」と、荒木氏は話します。

その追加施策の一つが、RPAの技術をExcel VBAで実現する「内製化RPAツール」を開発し、展開することです。これにより、RPAソフトを使用しなくてもアプリケーションの自動化が可能になり、営業店舗や各種センターへの展開が容易になります。

そして、もう一つ見えてきた課題が、RPAがシステム間の連携を補う役割を果たす一方で、そもそも社内にはいまだにシステム化されていない業務が多数に上るという現実でした。「例えば、担当者が紙の管理表を物理的に回覧して報告を行う手続きなど非効率な作業が、様々な業務で残っていたのです。これらをシステム化しないことには、いくらRPAの導入を進めても、現場の業務効率化はいずれ限界を迎えます。さらなる削減時間の積み増しを狙うためにも、私たちはこの問題にメスを入れる決断をしたのです」(荒木氏)

システムの選定:システム化が採択されず結果的に紙ベースの業務を強いられた現場
ネット上を徹底探索し、たどり着いたプリザンターの採用を決断

従来、同社でも、非効率なアナログ業務のデジタル化には様々な部署や担当者が取り組んできています。既に、社内の情報共有や各業務に使用するツールとして、グループウェア、業務ごとのパッケージソフトなど各種システムも稼働しています。しかし、既存の状況の中では、課題が山積しているのが実態でした。

まず、問題となっていたのが、各業務用の特別なアプリをグループウェアで開発したり、パッケージソフトの導入やカスタマイズをしたりする場合、相応の開発費用と開発期間が必要だったことです。案件によっては、エントリーからローンチまでに1年以上かかる場合もあります。「その間に外部環境が変化して業務要件が変わり、それに合わせて仕様を変更するために、再度案件のエントリーから始めるといったケースも見られた」と、荒木氏は指摘します。

また、各部署がそれぞれ導入やカスタマイズを施したパッケージソフトは、単体での運用しか考慮されていない場合が多く、他のシステムとのAPIなどの連携機能がないため、RPAを使って無理に連携を図らざるを得ないことも、問題視されていたことです。システムにAPI機能があれば、スムーズなシステム連携が容易に図れます。

そして、最大の問題を荒木氏は次のように話します。「相応の開発費用に対する費用対効果が認められず、導入案件が採択されないことから、結果的に紙ベースの運用を強いられている現場が残っていた点です。紙による管理からの脱却のため、グループウェアの掲示板にファイルを添付して運用するケースも散見されましたが、使い勝手が悪いのが実情でした」

そうした中、荒木氏が求めたのは、「必要な時に必要なシステムを現場の担当者がノーコード・ローコードで開発し、改修や修正もその都度簡単に行えるツール」でした。荒木氏は、ネット上を徹底的に探索し、20年5月、ようやくたどり着いたのが、プリザンターだったのです。「プリザンターは、無料で利用することも可能で、あらかじめ定義済みのデータ項目から必要なものを選択して手軽に使うことができます。テーブルの構造が実にシンプルで、これなら現場でも分かりやすく、活用が進むと確信しました。また、スクリプトを書けばあらゆるカスタマイズが可能で、API機能もあるためシステム連携も容易です。『当社で顕在化しているあらゆる問題を解消できるツールは、まさにこれだ』と考え、機能を検証しながら、導入を図っていくことに決めたのです」

初期導入:交渉の経緯を記録した紙の管理簿を繰り返し回覧する事務が常態化
プリザンターを活用したデジタル回付に切り替え業務負荷が大幅減

何度も繰り返される交渉の記録を紙で管理していたがプリザンターに置き換えることで大幅な効率化に成功

最初の本格的な導入は、外国為替業務オフィスで、プリザンターを未処理取引管理簿として活用することです。顧客の外国送金では、店名や口座番号、名前を誤って記載するなどのミスで、相手先の海外の銀行に入金できないケースが多々あります。その場合、顧客や先方の銀行から事情を聴取し、交渉の経緯を紙の管理簿に記録して、事態が完了するまで繰り返し、上席、そのまた上の上席と、回覧して押印する作業が延々と行われていたのが実態でした。同部署でも、過去にシステム化の案件を会社側に要望していますが、多額の開発費がかかるという理由から採択されず、AI・RPA推進チームに「何とかデジタル化する方法はないか」と、相談があったのが事の発端です。

そこで、提案したのがプリザンターでした。「本案件は、完了まで何度入力するのか、その回数が予想できない交渉記録のデジタル化です。こうした繰り返されるワークフローに対しては、プリザンターの活用が最適だと判断しました」(荒木氏)。使い方としては、交渉記録をプリザンターの「コメント欄」に入力。回付するメンバーを順番に登録し、スクリプト開発によって作成した回付ボタンをクリックすることで、ワークフロー管理が実現します。回付記録はプリザンターの「変更履歴の一覧」という標準機能で確認でき、誰がいつ回付ボタンを押したかが分かる仕組みです。

同システムは、20年7月にリリースし、以後、紙に押印する回覧が一切なくなり、プリザンター上のデジタル回付で完結するようになっています。結果、時間に換算して年間3200時間の効率化効果を達成し、業務負荷を大きく軽減することに成功したのです。こうした実績を重ね、RPAとプリザンターの連携による業務改善に手応えを感じたAI・RPA推進チームは、22年3月に当初目標だった年間100万時間の業務量削減を達成し、 次なる目標である年間130万時間の削減に向けてRPAとプリザンターのさらなる活用に踏み出すことになったのです。




りそなグループ全体の業務改善を推進するロボラボ室内




後編・活用編に続く

企業名
株式会社りそな銀行 ホームページ
所在地
大阪府大阪市中央区備後町2-2-1
設立
1918(大正7)年5月15日
資本金
2,799億円
事業
りそなホールディングス(HD)傘下の銀行。りそな銀行、埼玉りそな銀行、関西みらいフィナンシャルグループ(関西みらい銀行、みなと銀行の持ち株会社)でりそなグループを形成。首都圏・関西圏で地域密着型のリテールに特化し、顧客の財産管理も行う「信託」併営の商業銀行としては国内最大規模。グループ全体の従業員数は約2万人。
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