- 時間・コストがかかるFAXの情報照会をWebデータベースに移行し、瞬間検索が可能に
- PC端末などの予約管理、店舗混雑状況の可視化、QRコード連動システムも次々と実装
- プリザンターのメーカーサポートを活用し、グループのDXに寄与
導入効果:FAXによる情報照会は時間もコストもかかるのが長年の悩みの種
プリザンターを活用したWebデータベースで瞬時の検索が可能に
りそな銀行では、プリザンターの導入で業務改善効果が認められたことを追い風に、あらゆる業務に対して活用を模索し、旧態依然とした紙業務のデジタル化を積極的に推し進めていきます。
そうした中、2021年3月にリリースしたのが、プリザンターを活用した不渡・取引停止情報のWebデータベースです。従来、同行では企業への融資や当座預金取引を開始する前に、不渡・取引停止処分者に該当するか否かの確認を、手形交換所に対してFAXで照会し、FAXで回答を受信するという方法で行ってきました。ただし、この方法では照会件数に応じて料金支払いが発生し、照会から受信まで半日かかるなど、コストも時間もかけていたのが実情でした。
一方で、手形交換所では会員銀行向けに専用サイトで、日々更新される不渡・取引停止情報をCSVで還元するサービスも提供していました。同行ではこの点に着目し、Excel VBAで作成した内製化RPAツールを使って、毎日CSVデータを自動取得し、プリザンターに蓄積。法人・個人名で検索すると、瞬時に取引停止処分者の該当の有無を確認できるツールを作成し、社内向けの提供を開始したのです。「作業負荷の軽減と業務のスピード化が同時に実現し、算定した効率化効果は年間7500時間にも上った」と、同行AI・RPA推進チームのグループリーダー、荒木敏郎氏は話します。
22年11月には、手形交換所が電子交換所に移行し、電子交換サイトでの不渡・取引停止情報の検索が可能になりました。しかし、当該サイトへのログインにはあらかじめ届出済みのメールアドレス宛に送信されるワンタイムパスワードの入力が必要で、ひと手間かかるのが難点です。そこで、同行では電子交換所に移行後も、使い勝手の良い現行のプリザンター方式を活用し、RPAによって独自にWebデータベースを更新、運用して業務効率化に役立てているのです。
利用の拡大:テレワークで使用するサテライトオフィスの予約サイトを構築
サイトの構成をテンプレート化し、各種デバイスの予約にも応用
さらに、同行が試みたのが、プリザンターでサテライトオフィスを予約できるサイトを作成し、りそなグループ社員全体に対してリリースすることです。「サテライトオフィスは、働き方改革と新型コロナウィルス感染症拡大防止を目的に、テレワーク制度の一つの形態として、グループ社員が最寄り駅の銀行店舗の会議室などの余剰スペースでPC作業が行えるもの。現在全国各地に100カ所以上設置されています。グループ社員全員が利用対象のため、プリザンターの有効性をアピールし、一気に認知と評価を高めることも狙っていました」と、荒木氏は振り返ります。
サイトでは、プリザンターのフォルダ画面を独自にスクリプト開発し、縦軸に「日付」、横軸に「座席番号」をレイアウトした予約表を作成し、提供しています。予約時、社員は自分の利用時間帯を入力するだけで、所属部署や連絡先などは自動入力される仕組みです。他のグループウェアの掲示板や表計算ソフトでこうした予約表を運用すると、所属部署や電話番号、ID番号などの入力が必要で手間がかかる場合もありますが、同行が作成したプリザンターを使った予約表は、属性データが紐づいているため、面倒な作業が不要です。結果として、サテライトオフィスの利用は促進され、プリザンターの利便性の高さも同時に周知されることになったのです。
また、同行ではサテライトオフィス予約表サイトをテンプレート化し、PCやタブレット、Wi-Fiルーターなどの各種デバイス、社内のブースなどの予約にも使えるようにアレンジしています。これらの活用も推進され、効率化効果は年間5000時間にも及ぶと同行では算定しています。
さらなる活用:店舗窓口の混雑状況を取得し、プリザンターでの見える化を実現
QRコード連動の仕組みで、書類送付の際の受領書返送事務も撤廃
プリザンターの活用は、その後も活発化していきます。22年3月には、店舗ごとの窓口の待ち人数をグラフ化して表示するツールをプリザンターで開発。各店舗で店頭の機器によって表示している待ち人数のデータを収集し、全店の中でどの店舗の窓口が最も混雑しているかがほぼリアルタイムで把握できるシステムとなっています。具体的には、RPAをPC2台でフル稼働させ、各店の店舗ごとのIDで専用システムにログイン。待ち人数データを取得してAPIを通じてプリザンターにアップロードし、グラフに自動的に反映させる仕組みです。混雑が常態化している店舗は、対応する社員数が適正なのか、大量の税金を窓口で納付している法人など効率化の提案が必要な先がないのかなどを検証し、対策を打つなどの改善に役立てることができます。
一方、23年1月には、各店舗からセンター(書類を集約する倉庫)に送られる書類の送付書(カバーレター)にQRコードを印字し、バーコードリーダーで読み取ることで、プリザンター上の状況欄(ステータス)が「受領済み」に変わるシステムを構築し、リリースしています。これまで、センターでは受領書に受領印を押し、各店舗に送り返すという事務が発生していました。
それを、QRコードを読み取るだけで、APIを介してプリザンターにデータが伝送され、該当のID番号の文書の状況欄が更新されます。センターでの入庫処理が終わり、Excel VBAツール上で入庫完了ボタンをクリックしてQRコードを読み込ませると、状況欄が「入庫済み」に変わり、センターと店舗で素早く状況を共有することも可能になっています。
「受領書の返送事務が無くなることによって、年間1000時間の効率化効果が見込まれます。現在は一カ所のセンターに導入していますが、センターは他にも複数点在し、それらへの導入が進めば、効果を上積みできます。加えて、りそなグループの各社への導入も有効です。“物の授受”があり、受領書を返送していた業務のすべてを、このQRコードとプリザンターを活用した仕組みに置き換えることが可能で、今後もさらなる効率化が期待できると考えています」(荒木氏)
今後の展開:プリザンターが大きく寄与し、年間130万時間の業務量削減を達成 これまでの実績をもってグループ内でのさらなる効率化に向けてフル活用
こうしてRPAに加えて、プリザンターの活用を促進することにより、業務量の削減時間は当初目標だった年間100万時間を大きく超え、23年2月には130万時間(650人分)を達成しています。そのうち、プリザンターが関係している稼働中のRPAのシステムは160件あり、41万時間の削減に寄与しています。「どの会社、どの部署でも予算の関係などでシステム化からこぼれてしまう案件があるもの。そうなると、今まで通り人が我慢して作業することになり、当社でも生産性が上がらない要因の一つでした。そうした案件に真価を発揮するのがプリザンターです。低予算で高い効率化を実現し、現場に導入すると、部署によっては歓声が上がるほど、喜ばれることもあるのです」と、荒木氏は言います。
今後はグループ全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に、プリザンターをより活用していくため、りそなグループ全体での利用が可能となる第三者利用を許諾されたライセンス、並びにプリザンターを開発するインプリムからの手厚いサポートが提供される、年間サポートサービスの最上位版であるプレミアムプランの契約も締結しています。「先日もりそなグループのクレジットカード会社から、社内の部署間のワークフローに、りそな銀行で構築したプリザンターのシステムを変換して応用できないかという問い合わせがあり、即座にプロトタイプを作成し、提供しています。このような形で、銀行側で蓄積してきたシステムを、各社内、各社間の情報連係業務に積極的に横展開していく計画です。この施策により、24年3月にはグループ全体で150万時間の業務量の削減を目指しており、そのキーツールとしてプリザンターは大いに貢献していくと考えています」(荒木氏)